2017年5月15日月曜日

民俗芸能学会 第165回研究例会

民俗芸能学会 第165回研究例会
舘野太朗「村芝居の現在・過去・未来」
コメンテーター:中村規・神田竜浩
司会:神田より子
参加費:200円(会員でない方も参加できます)
日時:平成29年7月1日(土)午後2時~4時50分
場所:早稲田大学演劇博物館レクチャールーム

【要旨】
 今回の発表では、神奈川県の事例を中心に、村芝居の現況、担い手や上演の変化、将来への見通しと課題についてお話ししたい。
 村芝居とは、祭礼等の機会に村落で上演されるかぶき芝居である。そのうち、村落の住民がみずから演じるものを地芝居、外部の劇団や近隣の住民を招聘して上演するものを買芝居と呼ぶ。村芝居を請け負う劇団は太平洋戦争後に姿を消し、現在では村芝居と地芝居がほぼ同義となっている。現在、地芝居を上演する団体は全国に200件ほどあるが、江戸時代から連綿と上演が続いている団体は希で、多くの団体が中断と復活を経験している。
 神奈川県では、1800年頃には既に地芝居が上演されていた。明治以降は買芝居が優勢となり、神楽師の流れをくむかぶき専門の劇団が1970年頃まで活動した。その後、県下の村芝居は、海老名市大谷地区の地芝居を残して行われなくなるが、1990年代以降、各地で地芝居の復活がなされ、現在は、海老名市の大谷歌舞伎、相模原市緑区の藤野歌舞伎、綾瀬市の目久尻歌舞伎、横浜市泉区のいずみ歌舞伎、座間市の入谷歌舞伎の五団体が活動している。大谷歌舞伎を除く四団体では祭礼の場を離れて、公共ホールで公演が行われている。また、義太夫狂言の上演に不可欠な竹本は全団体で外部から演奏家を招聘している。
 現在の村芝居は民俗藝能の範疇で議論されうるものなのだろうか。浅野久枝は「創り上げられる「山の芸」―長浜曳山祭・奉納子供歌舞伎にみる町衆の心意気」(『民俗芸能研究』61、2016)において、「地元以外の指導者を招聘する地芝居すべてが民俗芸能かどうかは言及しないが、少なくとも長浜曳山祭で上演される子供歌舞伎は、「山の芸」という民俗に裏打ちされた芸能である」としている。守屋毅「地狂言の終焉」(角田一郎編『農村舞台の総合的研究』、桜楓社、1971年)を参照しながら、私見を述べたいと思う。

舘野太朗(いずみ歌舞伎保存会会員・大阪市立大学大学院文学研究科都市文化研究センター研究員)1985年生まれ。1998年、泉公会堂『白浪五人男』の日本駄右衛門で初舞台。2009年、筑波大学第二学群日本語・日本文化学類卒業。2012年、筑波大学大学院人文社会科学研究科国際地域研究専攻修了。修士(国際学)。現在の研究テーマは、傍流のかぶき芝居(村芝居、学生歌舞伎、小芝居、市川少女歌舞伎など)、日本におけるモダン・パジェントの受容と展開。