2015年1月7日水曜日

『ひばりの三役 競艶雪之丞変化』の劇中劇

市川少女歌舞伎が劇中劇で出演した美空ひばり版『雪之丞変化』について。

『ひばりの三役 競艶雪之丞変化』と『ひばりの三役 続競艶雪之丞変化』の前後編。
1957年制作、新東宝、渡辺邦男監督。
僕が見たのは、クラリオンソフト新東宝名画シリーズのVHS(ソフトのタイトルは『美空ひばりの競艶雪之丞変化』)。

ひばりは雪之丞、闇太郎、雪之丞母お園の三役。
雪之丞の師匠、菊之丞に市川門三郎が出ている。門三郎は翌1958年に大歌舞伎に復帰するから、このころは「かたばみ座」に出ていたのだろうか。時期は少しずれるが、ひばりと門三郎には、横浜の杉田劇場に出演していたという共通点がある。杉田劇場でもそうだったが、門三郎は、自分の一座を率いて芝居をしていたから、菊之丞のキャラクターと重なっておもしろい。

市川少女歌舞伎は「劇中劇 市川少女歌舞伎劇団」として出演。クレジットには「美寿次、寿々女、姫升、福升、三福、梅升、他」とそれぞれの名前も出ている。劇中劇以外の登場シーンはなし。

劇中劇の一覧とひばりの役所は以下の通り(いずれも推測)。
【前編】
口上(女方の拵え)
戻橋(小百合)
浜松屋(弁天)
落人(お軽)

【後編】
将門(滝夜叉姫)
廿四孝奥庭(八重垣姫)
河庄(小春)
おまつり?(女伊達)

ひばりの雪之丞を見せるためなのか、市川少女歌舞伎の座員にたっぷり見せ場があるわけではない。
それでも、前編では『浜松屋』の南郷の科白が聞けるし、後編では『おまつり(のような出し物)』でトンボを切るところが見られる。大劇場に出演していた頃の市川少女歌舞伎を見られるという意味では貴重だろう(本作の他には演劇博物館が『傾城阿波の鳴門』の映像を持っている)。
本作では、雪之丞が女であることを隠しているというのが趣向となっている。よって、雪之丞の相手役は男であると考えられる。が、それをいうのは野暮だろう。当時20歳のひばりと体格的、年齢的な釣り合いが取れていて、劇中劇の中でひばりが変に浮かないで見えた。

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